番外編 第4話 「伝わらない」と感じたそのときに、自分を守るためにできること

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「ちゃんと説明したのに、分かってもらえなかった」
「毎日の連絡帳、言葉の一つひとつを気にしてしまう」
「何を言っても否定されるような気がして、次の日が怖い」

そんな声を、私は多くの保育士さんから聞いてきました。
子どもを思っての対応なのに、伝わらなかったときの苦しさ――。
それは、仕事の大変さではなく“心の痛み”として残ります。

行き違いは、誰のせいでもありません。
でも、気づけば「自分が悪かったのかな」と自分を責めてしまう。
そんな優しい先生ほど、心がすり減ってしまうのです。


保護者対応のストレスは、心理学的に見ると「関係が崩れるかもしれない」という不安から生まれます。
保育は“信頼”の上に成り立つ仕事。だからこそ、保護者との関係がぎくしゃくすると「自分の仕事が否定されたように感じる」瞬間があるのです。

また、保護者も家庭という“もう一つの世界”を背負って園に来ています。
疲れている、焦っている、罪悪感がある――
その気持ちが言葉や態度に表れてしまうこともあります。
それを“自分への批判”と受け取らないことが、心を守る第一歩です。


🍀心がすり減りやすいとき

理想と現実のギャップを突かれるとき
「家ではできるのに」「うちの子はそんなはずない」と言われると、
自分の関わりが否定されたように感じます。
でも、それは保護者の“子を守る反応”。愛情ゆえの言葉です。
防衛反応を「愛情のかたち」と捉え直すと、少し距離を取って見られます。

感情的な言葉をぶつけられたとき
突然のクレームや怒りの声に、体が固まってしまうのは自然な反応です。
人は脅威を感じると「闘うか、逃げるか」という反応を起こします。
まずは深呼吸して、自分の身体を落ち着かせましょう。
冷静になってからでないと、言葉は届きません。

「どう伝えてもわかってもらえない」と感じるとき
何度話しても理解されないと、無力感が強まります。
でもそれは、言葉が届いていないのではなく、“心の余裕”が相手にないだけかもしれません。
「今は受け取る余裕がないのかも」と思うことで、自分を責める負担が減ります。


🌼自分を守りながら関わるためにできること

言葉の“矢印”を変える
「なんでわかってくれないの?」ではなく、
「どうすれば伝わるかな?」と視点を変えてみましょう。
これは“相手を動かす”ではなく、“自分を守る”言葉の工夫です。

“一人で抱えない”相談をする
・園長、主任、リーダーに相談する
・自治体や外部の保育士支援機関に助言を求める
・家族や友人に話して気持ちを整理する
・必要に応じて、心理職・医療職に相談する

相談には「客観的に整理する」「安心を得る」「再出発の力を得る」という3つの意味があります。
“話す”ことは、“離す”ことにもつながります。

“日常の区切り”をもつ
・帰り道で「今日はここまで」とつぶやく
・玄関で深呼吸をして切り替える
・お気に入りのハンドクリームを塗る

小さな儀式が、「仕事」と「自分の生活」を分けてくれます。


どんなに丁寧に伝えても、うまく届かない日があります。
でも、保護者が後になって「先生があのとき言ってくれた言葉が支えになりました」と話してくれることもあります。

“そのとき届かなかった”だけで、“伝わらなかった”わけではありません。
大切なのは、あなたが子どもを思って関わってきた事実です。
その誠実さこそ、保育の信頼を支える力です。

どうか、疲れた日には思い出してください。
「自分を守ることは、保育を続ける力になる」ということを。


園全体でセルフケアの環境を整えたい方、
職員が安心して相談できる風土をつくりたい園長・主任の方は、
こちらもぜひご覧ください👇
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この記事を書いた人

産業保健師・公認心理師として、働く人の健康支援に10年以上携わってきました。

保育園での勤務経験も踏まえ、現場の状況に寄り添いながら、
保育園向けの研修や職場づくりのサポートを行っています。

心理的安全性やコミュニケーションの視点から、
先生も職員も安心して働き続けられる環境づくりをお手伝いしています。

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