番外編 第5話 分かり合えない日に、自分をすり減らさないために

目次

こんな“ちいさな痛み”から、心は削られていく

連絡帳の言葉づかいを強めに直されて、胸の奥がズンと重くなる。
申し送りでため息をつかれて、「また私…?」と体が固まる。
グループLINEで既読はつくのに返事が遅く、不安のまま時間が過ぎる。

「大ごと」じゃないのに、じわじわ効いてくるのが職場の人間関係。
ここからは、よくある場面 → なぜつらい?(心理)→ 心の解き方 → 一言スクリプト の順で、リアルにほどいていきます。


よくある3つの場面と、心の解き方


① 価値観の違いでぶつかる

(保育観・段取り・安全基準)

具体例

・「もっと子ども主体で」と言ったら、「時間がない」で切られた。
・行事準備で“完璧”を求められ、試作品を何度も作り直し。

なぜつらい?(心理)

自分の専門性(価値観)が否定された感覚。
つまり「自分の仕事の意味」が揺らぐ瞬間。
また、相手の“急ぎ・不安”が投影され、責められているように感じることも。

心の解き方(NVCの4ステップ)

  • 事実:何があった?(例:試作品を3回やり直しと言われた)
  • 感情:何を感じた?(焦り/悔しさ)
  • ニーズ:何を大切にしたい?(子ども主体・現実的な時間配分)
  • お願い:何を望む?(合格ラインの共有)

ミニ台本

「今、試作品を3回作り直しています。私は焦りと悔しさがあります。
子ども主体と時間のバランスを大事にしたいです。
今日の合格ラインを一緒に決めてもらえますか?」


② 言い方・態度に消耗する

(ため息・皮肉・陰での指摘)

具体例

・申し送りのたびに「それ前も言ったよね?」と刺さる言い方。
・自分のいない場での指摘が耳に入る。

なぜつらい?(心理)

相手の表情・ため息などの非言語サインが「脅威」として認知され、
体は闘争/逃走反応で緊張モードに。
同時に「私が悪いのかも」という**思考の飛躍(認知の歪み)**が起きやすい。

心の解き方(身体→思考の順)

  • 体を落ち着かせる:3秒吸って6秒吐く×5回。肩を回す。
  • メモに分解:「事実/解釈/感情」を書き分ける。
  • リフレーミング:「きつい言い方=その人も余裕がないサインかも」。

ミニ台本

「今の言い方、私には少し強く感じました。内容は理解しています。
具体的にどこを直せば良いですか?」

陰口に対して

「直接フィードバックをもらえると助かります。
次回からは私にもその場で教えてください。」


③ 役割と負担の偏り

(“結局いつも私”の疲れ)

具体例

・午睡明けの片付けがなぜか常に自分。
・行事期、雑務が黙って自分に集まってくる。

なぜつらい?(心理)

役割期待が固定化し、不公平感 → 無力感に。
断ると「嫌われるかも」という見捨てられ不安も生じやすい。

心の解き方(境界の設定と見える化)

  • 可視化:1週間のタスク割りを表にする。
  • 合意形成:ローテーションを提案。
  • 個人境界:「今日はここまで」と宣言(時間境界)。

ミニ台本

「1週間のタスクを数えてみたら、午睡明けの片付けが私に偏っていました。
来週はローテーションにしませんか?
私は月水を担当します。」


すぐ使える「心のほどき方」6ステップ

  1. 体のサインを観察:胸の詰まり・肩の強ばり・早い呼吸。
  2. 感情を3語にする:苛立ち/不安/悲しさ。
  3. ニーズを特定:尊重/公平/予測可能性/安全。
  4. 事実メモ:日時・言動・影響(感情ではなく観察)。
  5. 伝え方を選ぶ:
     ・その場で一言(境界の合図)
     ・時間をとってDESC/NVCで話す
     ・記録を添えて主任・園長に相談
  6. 合意できないことに合意する:
     価値観が違う領域は、“安全な違い”で共存。

現実対応:きれいごとで終わらせないために

  • 相手は変わらないかもしれない前提で、
     自分が選べる行動を選ぶ。
     例)ローテ表の導入/第三者同席のミーティング/文書での合意。
  • やらないリストを持つ。
     例)深夜の愚痴LINE/感情のままの長文返信/黙って穴埋め。
  • エネルギー配分の目安「3–5–2ルール」
     3:必須の関係=丁寧に投資
     5:普通の関係=必要十分
     2:消耗の大きい関係=距離を置く(担当・時間・連絡経路を限定)

使い回せる“短い一言”集

「その言い方は私には強く感じます。内容は理解しています。具体を教えてください。」
「今日はここまでにします。続きは明日の朝に。」
「今は判断が難しいので、主任にも入ってもらって決めましょう。」
「それは私の担当範囲を超えます。割り振りを見直しませんか?」


それでも疲れた日のセルフケア

・3分だけ呼吸アプリ。
・湯船に頬まで沈める。
・その日できたことを3つメモ。
 (子どもが笑った/落ち着いて伝えた/助けを出せた)
・帰り道に**“仕事を置く儀式”**:深呼吸→「今日はここまで」。


園長・主任・リーダーの皆さまへ

人間関係の摩耗は、仕組みで減らせます。

  • タスクの見える化とローテーション
  • 1on1とフィードバック研修(言い方・聴き方)
  • 心理的安全性の取り組み(ルールと言語化)

産業保健師・公認心理師として、
コミュニケーション研修や体制づくりをサポートしています。

👉 園向け研修・支援のご案内(hoiku-kenshu.jp)


最後に

しんどさの裏側には、
いつもあなたが大切にしたい価値があります。

“丁寧に伝えたい”“子どもの最善を守りたい”
その誠実さがあるから、痛むのです。

どうか、自分を責めすぎないで。
安全な違いを許し、選べる行動を一つ選ぶ。
それだけで、明日は少し生きやすくなります。

あなたは、ちゃんとやれています。🌿

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この記事を書いた人

産業保健師・公認心理師として、働く人の健康支援に10年以上携わってきました。

保育園での勤務経験も踏まえ、現場の状況に寄り添いながら、
保育園向けの研修や職場づくりのサポートを行っています。

心理的安全性やコミュニケーションの視点から、
先生も職員も安心して働き続けられる環境づくりをお手伝いしています。

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